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『バナナと日本人』から40年

いまや日本で最も食べられている果物はミカンとリンゴを追い抜いてバナナとなりました。その8割はフィリピンから輸入されていますが、故・鶴見良行が書籍『バナナと日本人』(岩波新書/1982)で告発したことで知られるように、フィリピンでは植民地の爪痕と共にバナナ産業には人権侵害・環境破壊が隣り合わせでした。その問題は残念ながら現在も大きく変わっていません。フィリピンのバナナ生産現場で起きている問題を調査し、私たち日本人の責任も検証します。

研究会「『バナナと日本人』から40年」(通称:バナナ研究会)では、2017年度からフィリピン・ミンダナオ島のバナナ生産現場を訪問調査し、現地で起きているさまざまな問題を明らかにしてきました。

具体的には、

  1. 過剰な農薬散布がもたらす「毒の雨」
  2. 搾取的栽培契約がもたらす「債務の鎖」
  3. 結社の自由をはじめとする労働者の権利侵害

の3点を明らかにすることを目的として活動しました。調査の過程で、できるだけ関係者の声に直接耳を傾け、意見を収集することを目的としてフィリピン・ミンダナオ島で南コタバト州、コンポステラ・バレー州、ダバオ州のバナナ農園と周辺住民への聞き取り調査を実施しました。さらにコンポステラ・バレー州のバナナ出荷作業場労働者を代表する労働組合NAMASUFAの支援を継続的に行ない、労働者749名の不当解雇撤回を求めた政策提言活動にも関わっています。

本活動の一部はオリジナルビデオ作品『甘いバナナの苦い現実』として日本全国の教育機関・市民教育の現場で普及啓発活動に貢献し、またPARC会員向け広報誌「PARC通信」やPARCがかかわる国際キャンペーン活動「Fair Finance Guide」における調査レポート「人喰いバナナの真実と それを隠すグローバル金融メカニズム」(PDF)として公開されました。

ぜひ皆様にご覧いただければ幸いです。

なお、最新の報告書「バナナが降らせるフィリピン『毒の雨』」(PDF)で報告している点には下記の点が含まれます。

1)フィリピン・ミンダナオ島で「(バナナに対して使用される)農薬が原因で健康被害を受けた」とする住民や労働者の証言を取りまとめ、報告。「家畜が死んだ」、「失明した」、「皮膚が激しい炎症を起こした」、「腎機能を失った」、「出生異常につながった」などの証言

2)国内流通バナナの農薬スクリーニング調査を行なった結果、環境への配慮に力点を置いた認証ラベル「レインフォレストアライアンス」の認証を受けたバナナから使用が禁止されているネオニコチノイド系農薬成分(イミダクロプリド)を複数の検体から検出した。

3)国内流通バナナの大手3社のバナナに残留する農薬成分のスクリーニング調査では、スミフル社バナナからは1検体当たり平均1.87成分、ドール社バナナからは平均1.12成分が検出された一方でユニフルーティ社バナナからは平均0.15成分しか検出されず、84.6%の検体からは農薬成分が検出されなかった。

農薬成分が多く検出されることが、ずさんな現地オペレーションを証明するものにはならない。しかし、安定して残留量を低減させるにはある程度の管理環境が必要であり、3社の間には管理体制の有意差があることが結果から推察される。

資料

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