2023年8月24日、福島第一原子力発電所の沖1㎞の地点から放射性物資を含むALPS処理水の海洋放出が開始されました。
PARCではこのタイミングに合わせてスタッフ・理事・会員の方と福島を訪ね、これまで一緒に活動してきた菅野正寿さん(元福島有機農業ネットワーク理事長)とその仲間たちからお話を伺うとともに、太平洋島しょ国で海洋放出に反対する市民社会と連帯するアクションを実施しました。
浪江町津島地区の住民の方で、2011年3月15日に家を離れてから今も帰還できていない三瓶春江さんは、「流す・流さない」の単純化された二択で考えないでほしい、と話されました。汚染水が発生しにくいように抑制し、線量がもっと下がるまで保管するなど建設的な第三の道がまだあるのに、極端な二択を突き付けられることに問題意識を示されました。
『生業(なりわい)を返せ、地域を返せ!』福島原発訴訟原告団事務局の佐久間康恵さんは、海洋放出をしなければならないほど差し迫った状況なのであれば、まずは、議論を打ち切ってまでそのような決断をしなければならなくなる事態を二度と起こさないという保証をするべきであると語られました。すなわち、すべての原発を停止させ、二度と稼働させないことを約束するべきである、と。
一方で、PARCには太平洋島しょ国の活動仲間からも海洋放出に反対する声が届いています。
フィジーで活動する「グローバリゼーションに抗する太平洋ネットワーク(PANG)」ではフィジーの市民が納得してない中で開始された海洋放出に強く反対しています。
フィジーを含む13か国が署名する「南太平洋非核地帯条約(通称:ラロトンガ条約)」では過去の核実験とその被ばくの経験から、加盟国は南太平洋におけるあらゆる核の汚染に反対する、との立場が明文化されています。これは日本政府が言い逃れしているように、放射性物質の核種や放射能の量によっては許容されるというものではありません。あらゆる核の汚染に反対する、と太平洋の国々は誓っているのです。
その思いを踏みにじり、自国の手続き論を押し付けて海洋放出を決行する姿勢は自分勝手な権威主義そのものです。
日本政府が語るゆがんだ「グローバル・サウス」への注目ではなく、真に南の視座に寄り添った立場からPARCは引き続き問題の国際発信と交流に努めます。
(写真1.福島県双葉町にて海洋放出が行なわれている海を臨んで撮影)
(写真2.在フィジー日本大使館に向けて抗議するフィジーの人びと)