日本全国の小中学校で提供されている学校給食は、子どもたちの健康と成長を支えるだけでなく、食について学ぶ生きた教材の役割も担っています。近年では、給食への地場農産物や有機農産物の導入が注目を集めています。
しかし、給食が実現すべき価値は「食の安全」だけにとどまりません。年間を通じて大勢の子どもたちが食べる給食には、どんな食材を誰が作り、どう届けるか、調理をどう行うか、といった仕組みづくりが欠かせず、給食をめぐる選択は地域のあり方をも左右します。給食を見つめ直すことは、食への権利、地域の発展、自治体による自治といった課題に挑戦していくことでもあるのです。
実際、日本の各地の自治体では、給食を軸にした地域の再生が始まっています。生産者の育成や自然環境の保全、子どもの貧困といった課題への取り組みの中で、給食の役割が改めて注目されているのです。さらに隣国・韓国では、学校給食の改善を求める市民運動をきっかけに、有機食材を用いた給食を無償で実施する「親環境無償給食」がすでに定着しつつあります。日本と韓国の自治体での取り組みへの取材を通じて、地域の未来を形作る給食のあり方を考えます。