激しさの増した豪雨、異常な熱波、氷河の消失など気候変動はすでに目に見える形で私たちの世界に危機をもたらしています。その対策として多くの国は近い将来に温室効果ガスを削減する目標を立てて、実行に移しています。
しかし、ほとんどは再生可能エネルギーの拡充と電気自動車の普及を目指すものであり、どちらも大量のレアメタルを必要とする技術です。中でもニッケルは限られた場所でしか採掘できないにも関わらず、生産量を倍増しなければ気候危機が避けられないと世界銀行や国際エネルギー機関は試算してきました。それほどのニッケルをいったいどこから採掘するのでしょうか?
ニッケル生産地を取材した私たちは、多くのニッケルを産出しているインドネシアやフィリピンで、ニッケルのために土地を奪われ、森が破壊され、水を汚されている人びとと出会いました。気候危機は差し迫った問題であり、対応が急がれます。しかし、誰かを犠牲にした対策でよいのでしょうか? 現場からの声を紹介するとともに「誰も取り残さない」気候危機への対策や「ビジネスと人権」のあり方を考えます。
【取材地】
フィリピン:リオツバ・ニッケル鉱山/インドネシア:ソロワコ・ニッケル鉱山