私たちの暮らしに欠かせない銀行。お金のやりとりを容易にするため、将来に備えるため、私たちは預金口座を作ります。しかし、銀行に預けた私たちのお金は、私たちの知らないところで、さまざまな事業に用いられています。
気候危機の脅威を前に世界で呼びかけられている、化石燃料からの脱却。ところが、世界の大銀行は、再生可能エネルギーへの投融資の一方で、それをはるかに上回る額を化石燃料に投融資し続けていました。日本の銀行も例外ではありません。インドネシアでは化石燃料の中でも最も二酸化炭素排出の多い石炭火力発電所の建設が、いまも日本の銀行のお金で進められています。
私たちのお金が人権侵害に加担してしまっているケースもあります。身近な加工食品に含まれるパーム油を生産するある農園で発覚した女性のタダ働きや児童労働。ところが、問題発覚後も日本の銀行はこの企業への融資を継続しました。私たちはモノの消費を通じてだけでなく、銀行に預けたお金を通じてこうした問題に関わりを持っています。
こうした現実の一方で、投資に対する責任という考え方はすでに定着しつつあります。お金を運用する銀行に社会的責任があるように、お金を預ける私たちにも、よりよいお金の使われ方を銀行に求めていく責任があるのではないでしょうか?
【構成内容】
第1部 石炭火力発電 気候危機を悪化させるお金の流れ
第2部 パーム油 サプライチェーンに潜む人権侵害
第3部 フェアなお金の流れを作るには?