日本の主食、お米。しかし、生産者は、10年後には日本で米づくりができなくなるかもしれないと語ります。日本の米づくりを追い詰めてきたものは何か、秋田、山形、新潟、埼玉、岐阜、熊本、そして東京の生産と消費の現場を歩き、さらにはメキシコ、タイの農民の声にも耳を傾けながら、米づくりが持つ意味を考えました。
そこで出会ったのは、めまぐるしく変わる政策と、お米の輸入自由化を契機に持ち込まれた競争の論理でした。米の増産を叫ぶ一方で、大量の小麦を輸入してきた政府。お米の消費量が減少すると、一転、生産量を規制する減反が開始されます。1990年代には、お米の輸入自由化が段階的に進むなかでお米の値段が急落。「効率化」の名の下に進められた耕作面積の大規模化は、山国で棚田が多い日本の生産現場に混乱をもたらしました。生産者の収入は減り続け、2007年、時給に換算した稲作農家の労働報酬は、なんと179円。いま政府が進めているTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)に参加した場合、90%もの米が輸入米に置き換わると農水省は試算しています。
本作は、こうした事実を追いながら、生産者と消費者の思いに耳を傾けます。そして、食糧を貿易することの問題点、自給の意味、食の安全、米づくりを通して見えてきた自然の循環や多様性の大切さについて考え、私たちが大切にしたい価値とは何かを問いかけます。