日米首脳会談から約3か月が経った 12 月中旬までの間、米国側は着々と交渉入りの準備を進めている。これら諸手続きに際して公表される文書から、さらに日米貿易交渉の全体像を読み取ることができる。まず基本的なこととして、2018 年 9 月に米国トランプ大統領と安部首相が首脳会談を行い、日米間で新たな貿易交渉を開始することが決まった(日米首脳声明)。しかし日本政府はこの交渉を、「物品のみに限った日米物品協定(TAG)である」との説明を国内に行い、その定義をめぐって批判が噴出した。すでに多くの指摘がなされている通り、今回の貿易交渉は、物品貿易だけに限定されておらず、むしろサービスや投資なども含み込む協定であることが、日米首脳声明には明記されている。この前提に沿って、米国側はこの貿易交渉を「米日貿易協定(U.S.-Japan Trade Agreement)」と規定し、USTR もウエブサイトでそう記載している。日本政府が主張する「TAG」などという記載は一切なく、米国側は当初から交渉対象を物品貿易に限定していないことが、各種の文書から改めて確認できる。
2018年12月16日
内田聖子
NPO 法人アジア太平洋資料センター(PARC)共同代表