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2023年10月16日から19日にかけてインドネシア・スマランで世界社会フォーラムのテーマ別集会(Thematic Social Forum/TSF)として鉱業および採取産業にかかわる第二回目となる国際集会が開催されました。アジア太平洋資料センター(PARC)ではこれまでに日本の投資や企業のサプライチェーンが関与している採掘地での環境破壊・人権侵害について調査・啓発・提言活動を行なってきましたが、その一環で会合に参加したのでご報告します。

TSF初日全体会の様子(写真提供:TSF2023)

集会には約300名の活動家や採掘産業に脅かされるコミュニティの方々が参加し、猛威を振るう採掘事業者の実態と、それに抵抗するための国際的な民衆運動の未来について議論が交わされました。

近年、気候危機に対する手段として脱炭素技術が世界中で注目されています。その普及に不可欠となる鉱物資源を転換鉱物(Transition Mineral)と呼んだり、今後の経済を支えるために重要な鉱物であることから重要鉱物(Critical Mineral)などと呼んだりして新聞・テレビなどが報じることもしばしばあります。

ところが、その報道の主だった内容は国同士が競ってそれら鉱物の確保に走っている点であり、さも資源ナショナリズムを煽るように語られがちです。ほとんど報じられないのは、そのように世界中の大国や大企業が国家的威信をかけて鉱物確保に乗り出したときに、採掘される側のコミュニティには何が待ち受けているのかという点です。

すでにPARCの現地調査で明らかにしてきたように、爆発的に拡大するニッケル・コバルトなどの需要によってフィリピン・インドネシアのコミュニティは住民の意思をないがしろにした人権侵害ともいえる開発が進められようとしています。今回の国際集会はまさにそうした危機にさらされるコミュニティの人びとに焦点が当てられました。

南米、アフリカ、アジアなどの途上国に限らず、北米や欧州でも先住民族や住民が暮らしを奪われるほどに世界は鉱物に飢えています。気候危機は確かに世界中でいのちを脅かす問題ですが、そのために一部のコミュニティが犠牲になってよいものでしょうか? 集会に集まった人びとは「世界のために…」という言い訳で採掘活動を押し付けられるコミュニティのことを「サクリファイス・ゾーン(生贄に捧げられる地域)」と呼びます。そしてそのような国際社会による人権侵害の正当化を糾弾しました。さらに、「サクリファイス・ゾーン」にされる地域は得てして人口密度が低く、自然資源が豊かな地域です。都市のような人口密集地を犠牲にはできないという功利主義的な計算が行われるからです。それはつまり、犠牲にされる地域は、しばしば気候危機への加担度合いが最も少ない地域でもあるということです。むしろ、何千年といのちをつないできた知恵が根付いている地域であることの方が圧倒的に多いのです。世界はそのような地域を破壊するのではなく知恵と文化から学ばなければなりません。

奇しくもこの集会はイスラエルによるパレスチナに対する攻撃が続けられるさなかに開催されました。戦争と破壊もまた鉱物需要を圧迫させる最たるものの一つです。

集会は、暴力とその根底にある差別、資本主義と帝国主義に反対し、誰も犠牲にしない世界を目指す宣言を起草して終了しました。

※宣言は会議終結後に、多言語への翻訳や文化的配慮が確認されたのちに集会ウェブサイトに掲載予定です
https://tsfmining.org/

TSFで深海採掘禁止を訴える太平洋島しょ国の活動家たち

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