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2023年12月24日現地時間午前5:30頃、インドネシア中スラウェシ州にあるモロワリ工業団地(IMIP)において、ニッケルを生産するための溶鉱炉で爆発が起き、1月4日の現地報道時点でインドネシア人13名と中国人8名の計21名の死亡と38名の重傷者が確認されています。

この事故を起こしたニッケル製錬所は中国籍のステンレス大手である青山鋼鐵集団が出資する現地法人Indonesia Tsinshan Stainless Steel(ITSS)社が所有するものですが、日本の阪和興業株式会社も10%出資している企業です。阪和興業はこのほかに同じ工業団地にて韓国の電池正極材メーカーEcoPro社や中国の電池部品メーカー格林美股份有限公司(GEM)社らの出資するQMB New Energy Materials社にも8%出資しており、中国国営投資会社である広東広新控股集団有限公司の保有するIndonesia Guang Ching Nickel and Stanless Steel Industry(GCNS)社にも5%出資しています。すなわち、今回の事故を起こしたニッケル工場に関わらず、阪和興業を通じて日本とも関係性の浅からぬ工業団地の一つです。

この工業団地では2023年の4月にもGCNS社の作業員が二名死亡する労働災害が生じており、NHK Worldなどのメディアでも周辺への環境汚染について報じられています。(https://www3.nhk.or.jp/nhkworld/en/news/backstories/2492/

さらに、モロワリ周辺では爆発事故の話題も冷めやらぬ12月28日にGunbuster Nickel Industry(GNI)社の製錬所で火災が発生し、12月30日にはSumber Permata Mineral(SPM)社のニッケル鉱山で土砂崩れによって2名の労働者が亡くなる事件が起きています。

インドネシアは国策としてニッケルを中心とした鉱物産業を通じた経済発展を目指していますが、その中でも近年特に注目されているのが、自国内で付加価値を高めてから輸出収入を得るために「川下産業の発展(Downstreaming)」に力を入れている点です。多くの資源産出国では鉱石素材をそのまま輸出してしまうので自国の産業に十分に寄与することなく、むしろ南北格差を広げる要因になることが指摘されてきましたが、インドネシアでは鉱石の禁輸措置も含めて自国内に製錬所、電池工場、自動車工場を誘致することで産業発展を目指してきました。ところが、そのための外国資本を集めるためには様々な規制緩和もセットで導入され、モロワリ周辺ではとりわけ労働衛生の監視が十分に行き届かない状況で鉱山及び製錬所が操業されてきました。

Jakarta Post紙などの報道(https://www.thejakartapost.com/opinion/2024/01/10/analysis-safety-standards-under-scrutiny-after-explosion-in-morowali.html)によれば、モロワリ工業団地は「独立国家のような態度」を取り監督署の職員が入ることさえ困難であったとのことです。もちろん問題はモロワリに留まりません。マカッサルに拠点を置いて労働者を含む貧困層への法的支援を行なう非営利組織のLBH Makassarによれば2023年の1月から9月までの間だけでインドネシア全国のニッケル製錬所にて19の労働災害が発生し、16名が死亡、37名が負傷しているとのことです。

そして今回の爆発事故もそうですが、中国も多くの投資をインドネシアに対して行なっており、中国企業が保有する鉱山や工場での事故も決して少なくありません。その報道では中国企業であることがことさら取り上げられることが多いですが、その裏では中国企業を盾にして日本企業が出資し、鉱物資源を日本に輸入しているケースも決して少なくありません。爆発事故の原因は調査結果が明らかにされなければわかりませんが、今回の死亡事故を起こした工場からのニッケルは日本でも使われているものであり、日本企業と日本に生きる私たちにも責任のあるものです。今後も事故要因の調査結果に目を光らせるとともに問題を見過ごしてきた阪和興業の責任も追及していきます。

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