1979年夏、アジア太平洋資料センター(PARC)は、その10年前に発刊した英文雑誌『AMPO』を通じて蓄積されてきた国際的つながりの網の目を基盤に、新たな雑誌『世界から』を発刊しました。同誌は1979年夏から1992年3月まで計42巻が発行されましたが、その全巻のアーカイブをPARC50周年に際して立ち上げたオンラインアーカイブ「アジア太平洋民衆運動アーカイブ(AMPO-AP)」にて公開しました。
『世界から』が発刊された当時、超大国となったソ連はすでに社会主義の矜持を見失い、個別国家の原理に飲み込まれていました。米国とソ連が覇権を争い、世界各地の民衆を代理戦争に巻き込む殺し合いを誘発させるに至っていた時代です。その時代において、『世界から』は国家の論理を乗り越え、民衆の連帯を紡ぎ直すための媒体としての情報発信を行いました。
奇しくも、『世界から』の発行時期は、光州事件、天安門事件、東欧社会主義の崩壊とソ連解体、冷戦の終結と米国による湾岸戦争など、国際秩序を揺るがす大きな事件が立て続けに起きる時代と重なっています。その時期に民衆を結びつけるために我々は何を学び、何を声高に叫ぶのか? その試行錯誤の過程が『世界から』の一つひとつのページに描かれています。
現代も我々は複数の戦争・紛争・占領といった暴力を目の当たりにしており、まだその直接の暴力に直面していない地域ではそこへ至るような国家の覇権争いが増々顕著になっています。『世界から』が目指したものは決して時代と共に風化するものではなく、むしろ、近年においてはますますそのような媒体の必要性が高まっているとさえ言えるかもしれません。
例えば、パレスチナについても『世界から』では3回特集され、現地からの報告も10回以上掲載されています。80年代に紡がれた運動は今を生きる私たちにも大きな学びとなるものです。
過去を観察するためにではなく、これからを構想する糧とするために、ぜひ『世界から』のアーカイブをご活用ください。