ニューカレドニアにおける「暴動」ばかりが国内では報じられていますが、現地の独立運動は先日非暴力的な手段でマクロン大統領との直接対話を実現し、平和的交渉の末に憲法改悪案の取り下げ方針を勝ち取りました。
カナキー・ニューカレドニアは1946年よりフランスの「植民地」ではなくなりましたが「海外領土」という名目の下で現在もフランスの領土とされています。しかし、現地住民の約40%を構成する先住民族による独立運動は活発であり、1960年に国連で採択された「植民地と人民に独立を付与する宣言」の適用国として毎年「完全な自治」を目指している人民がいることをその特別委員会にて報告しています。先住民族らは自らをカナクあるいはカナカと称し、領土をカナキーと名乗ってきました。
その先住民族によって主に構成されるカナク社会主義民族解放戦線(FLNKS)ら独立運動の長年の取り組みの成果もあり、独立派は徐々に勢力を増してきました。しかし今年、フランス政府は独立派先住民族の地方選挙における投票を「薄める」ために地方参政権をカナキー・ニューカレドニアへの移住者に認める憲法改悪を進めてきました。これまでカナキー・ニューカレドニアにおける地方選挙の有権者として認められていなかったフランス本国からの移住者が投票権を獲得すればカナキー・ニューカレドニアの独立は大幅に遠のくことになります。しかも、この憲法改悪はカナキー・ニューカレドニア議会で行なわれるのではなく、パリのフランス議会上院をすでに可決し、下院国民会議に提出されました。
この度のカナカ先住民族の怒りは自らの島の未来のことを遠くパリで勝手に決められ、そのことで自分たちがさらにマイノリティに押し込まれることに端を発しています。カナキーのことはカナカの人びとと共にカナキーにて決める、それが当たり前の大原則であるべきであると人びとは怒りを示したのです。怒るべくして怒っているカナカの人びとに対して、しかしながら、FLNKSら独立運動は常に静穏・平和と対話を訴えてきました。
PARCでは2024年5月20日に、太平洋の非政府組織24団体の仲間と共に下記の連帯メッセージに賛同署名し、フランス政府および国際社会に対してカナキーの人びととの平和的対話の場を求めました。その声明は太平洋地域の各種メディアでも報じられています。
■NGO連合による声明本文はコチラ:
https://files.parc-jp.org/docs/EN-[MEDIA%20STATEMENT]%20Kanaky-New%20Caledonia.pdf
■太平洋地域の各種メディア報道例:
Asia Pacific Report
Radio New Zealand
Pacific Islands News Association
PNG Post Courier
Fiji One News
Fiji One News Interview with Joey Tau
このような国際的プレッシャーの成果もあり、マクロン大統領は2024年5月23日にカナキー・ニューカレドニアの首都ヌーメアにてFLNKS代表と直接対話に臨み、有権者登録にかかわる憲法改悪の取り下げに至る事態の段階的沈静化に合意するに至りました。その詳細は下記リンクよりご覧いただけるFLNKSの公式声明に示されています。
■FLNKS公式声明はコチラ:
https://files.parc-jp.org/docs/Press_releaseFLNKS05252024.pdf
しかし、声明にもあるように、今回の対話でカナキーの独立が前進したわけではありません。PARCでは引き続きカナキーに限らず、すべての植民地の爪痕が癒され、人びとの完全な自治が実現することを求めます。
また、カナキー・ニューカレドニアは世界有数のニッケル産地として知られており、住友金属鉱山をはじめとする日本企業が多くのニッケルを調達しています。倫理的鉱物調達を志すのであれば、植民地制度の爪痕を利用するのではなく、完全な自治権を認められたカナキーと新たな調達契約を結ぶべきです。